響いた声に、リーシャは嘆息して返す。

 
 「何故?」

 「君の婚約者なんだろう?頼ってあげないの?」


 座ったまま、顔をあげて声の響く方へと椅子ごと体を向けて目の前に立つ男を見つめる。
 リーシャの目に映るのはラナルフと同じ銀髪に青い瞳の瞳の青年。不敵に笑う男は靴音も静かに響かせ、近づいてくる。

 
 「困ってないのに、頼る必要は無いだろ?」

 
 リーシャの目の前でぴたり、と止まって男は微笑む。
 腰をかがめ、顔を近づけてくる男にリーシャは眉を僅かに顰めて視線を向ける。


 「嘘はいけない。
 あんな風に絡まれて、不快に感じない訳が無い。
 それともラナルフは――」

 
 動かないリーシャの眼前で、男はいったん言葉を区切る。
 至近距離だからこそ、男の瞳が悪戯に輝いているのが良く見える。
  

 「そんなに頼りない?」