「お前と婚約したいと母に言ったとき、母は俺が本当にお前を愛しているなら認めるが、それ以外は認めないと宣言した。母のことだから、お前を認めさせない限りは自分のお気に入りの王女達、または貴族の娘を俺に相手させる気だと思う」


 ラナルフはそこで一旦話を区切り、一呼吸置く。
 リーシャはそれを黙って聞きながら、プライベートと仕事でここまで出来が違うやつも珍しい、とそんなことを考えていた。


 「いちいち母の連れてくる奴等の相手をしてたんじゃ仕事に支障が出るし、何より俺の時間がなくなるから早いとこ母に認めさせるための協力をして欲しい、と言いにきた」

 「ギリギリ合格」


 唐突に、リーシャはそうラナルフへと告げる。
 それを聞いてラナルフの表情が歪むが、それを気にするでもなくリーシャは続ける。


 「君は確かに仕事はできるようだけど、頭が固い。もっと柔軟に生きなくちゃ、いつか息詰まるよ」

 「どういう意味だ?」

 「どういうもこういうも、そのままの意味だけど?君の母君は君が私を愛していると解れば、認めるといったんだろう?それなら私の方が君に気持ちが向いてるかどうかはともかく、君が私に尽くしている振りをすれば良い。良かったじゃないか、私の要求を呑むことで私に尽くしていると、少しは思わせることが出来て」

 「自室を与えたり、菜園を許可したり、一人で出歩かせるのが、か?」


 怪訝そうなラナルフにリーシャは微笑む。