踊るためにダンスフロアへと移動すると周りは自分達に気を使ってか、邪魔にならないようにと移動してくれる。


 「気にならないのか?」


 自分のリードで軽やかに踊るリーシャに尋ねる。
 自分達の会話が聞こえるものなどいないだろうから取り繕うこともせずに、視線で口元を隠しながらリーシャの方を見て会話しているどこかの令嬢たちを示しながらラナルフは言う。


 「何を気にすることがあるというんです?何一つ、気にすることはありませんわ」

 「それ、疲れないか?」

 「言いましたわよね、賓客の前では王女としての責務は果たすと。自室や舞台裏とは違い、ここは人の目がありますもの。殿下も私を見習った方が宜しいのではなくて?」


 自分が迂闊すぎるのか、それともリーシャが硬すぎるのか、どちらかと言えば前者なのだろう。小さく嘆息して返事を返す。


 「そのようだ。では、リーシャ姫。今晩改めてお話があるので貴女の部屋へお邪魔する許可を頂きたいのですが、おゆるし頂けるでしょうか?」

 「殿下の御心のままに」


 ラナルフの瞳にはにっこりと微笑むリーシャが映っていた。