キラーンと音が聞こえた気がした。速記さんの爛々と輝く瞳に、この人もピゲさんのように何らかの中毒者なのでは、と一抹の不安を覚える。

「ほしいほしいほしいほしい……」

 さらに、巫女さんの手の平に穴が空くのではと危惧してしまう程、血走った目で凝視する速記さん。

 こ、こわすぎるっ!!
 だから、どんだけ鼻毛が欲しいんですかっ!

「じゃあ、速記ちゃん、達筆君に催眠術かけてくれる?」

 え、ええええっ!!

 に、二酸化炭素だ!! いや、ヘリウムガスだっ!!
 ヘリウムガスの重量並の軽さで、とんでもないことを言い放ったぞ、この巫女さんっ!!

 ま、待て。いくら、白か黒で人を別けたとき、限りなく黒に分類されるであろう、速記さんでもそんな、催眠術なんて――

「ああ、催眠術……どのような」

 できるんかいっ!!
 『ああ』って!! 「そんなことね」って意味がたくさん詰まってそうな『ああ』って!

「うーんとね」

 愛らしく小首を傾げながら巫女さんは、たもとにすっと手に入れた。

「達筆君に、サインさせるだけでいいの」

 四つ折にしたペラペラの紙を速記さんに渡す。

 すごく、すごく、嫌な予感がするぞ。
 しかも、絶体絶命のピンチの感じも漂ってきたぞ。