気づけば俺は、殿と話しながらも手を伸ばしてバナナを頬張っていた。
習慣とは怖ろしい。

とはいえ、バナナを口にするとほっとするから不思議なものだ。

「ああ、バナナ起きたんだって?
さっき下でお母さんに聞いたわよ」

そこには、両手いっぱいに緑のバナナを抱えた剣道さんが居た。
ショートヘアが少し、伸びているように見えるのは気のせいだろうか。

「良かったー。
どう?一月ぶりのバナナは」

美味しい?と、満面の笑顔で聞いてくる剣道さん。

ひ……一月?
俺、一ヶ月もここで寝ていたの?

俺はあっけらかんと告げられた怖ろしい事実に唖然とした。
食べかけのバナナすら、途中で折れる始末だ。

「あら、ドウちゃん。
案外ぴしっと言っちゃうのね」

優雅に微笑みながら、巫女さんが言う。

「だって隠したって仕方が無いじゃない。
幾らバカでもすぐ気づくわよ。もうすぐクリスマスだってこと」

本人を目の前に、<幾らバカ>扱いはちょっと酷くないですか?

「まぁ、そうだな。すぐ気づくよな。
ハッハッハ」

空笑いする殿。

えっと。俺、殿の除霊の手伝いをしたから、こんな目にあってるんですよね?
お礼の一言もないんですか?

「そうよね。気づかないほうが怖いわよね。
私としたことがどうかしていたわ。
とにかく、バナナくんが目覚めてくれて良かった」

巫女さんは俺の手を握って、涙ぐんでくれている。

そ、そんなに俺のこと心配してくれていたんですか?
っていうか、少しは自分が放った矢に俺が当たって倒れていたんだっていう、自覚、持ってます?