「っていうか、ドウちゃん。
さっき、生徒会室には幽霊しか居なかったように思うんだけど。
私、殿のこと見落としちゃったのかしら」

困ったわー、あの面白いキャラを見落とすなんて私ももうろくしちゃったのかしら、と、こちらは焦ることも動揺することすらなく、ぼそりと呟いている。

剣道さんは肩を竦めた。
短い髪がさらりと揺れる。

「それよそれ。
それが、殿にとりついている霊なのよ!」

「やったぁ」

そこで、ついに。
巫女さんは。
俺がうっとり見蕩れてしまうほどの、幸せそうな笑みを浮かべたのだ。
クリスマス前夜の子供だって、そこまでは喜べないだろうというような、極上の笑顔だ。結婚式が決まったばかりの女の人、とでも言おうか。
美女が浮かべる無邪気としか言いようのない満面の笑みに俺の瞳は釘付けになる。

「いいの?それで」

「だって、除霊すれば私の力がアップしていくんだもん。
すればするほど強い巫女になれるのよ♪」

言って巫女さんは、ぽきぽきと、その手の指を鳴らしてみせたのだ。