「バナナくん、顔色悪いよ?」

それを素早く見つけて、巫女さんが言ってくれた。

「あ、……大丈夫です……」

美人には心配かけちゃダメだ。
俺は無理矢理笑ってみせる。

「そう?
なんか、バナナくんって寿命の残りが短そうなのよねー」

ええ?

俺は耳を疑った。
巫女さんは悪びれることもなければ、心配することもなく。
ごくごく普通の顔をしている。

そして、もう一度真っ直ぐ俺の顔を見て

「私、人の残りの寿命が見えちゃうの。
もっとも、相手の寿命が短くなったときに限るんだけど」

と、しれっと言ってのけた。『この牛乳明日賞味期限切れるから、今日飲んじゃうね』と言うのと変わらないテンションで。


いかんいかん。
これ以上、話を聞いたらダメになる、気がすごくする。
俺の中で、パトカーの上についているものに酷似した赤い警告灯が音を立てて回り始めた。

殿の知り合いの知り合いなんだ。
類は友を呼ぶ。

この人だって美人ってだけで、中身は相当変、なのかもしれない。
用心するにこしたことはない。

え?
俺も殿の知り合いじゃないかって?
友じゃなくって、後輩だから、関係ないんだよっ!……ってことに、しておいてもらいたい。