びしり、と、殿の人差し指が俺の方に向けられる。

今、その美しい指の周りに、絶対に効果線が見えた。そうだ、ここはきっと漫画の中なんだ。俺は無意識に現実逃避を始めていた。

「君、運が悪いんだ」

気の毒にねぇ、と、ようやく昼食を再開した会長が呟く。
いや、そこ、流しておいてもらって構いませんけど?

「本当に、酷いもんなんだよ。
コイツがラッキーなのは、俺の後輩だってことだけなんだ」

いや、それが全ての不幸の源だと思いますけど?!

俺の心のツッコミなど無視で、ほうほう、と、会長は話を聞いている。

「いつか、コイツ。自分が食ったバナナの皮でスベって転んで死ぬんじゃないかと思ってね、俺はそれだけが心配なんだよね」

……そんな心配してもらう必要ありません。

「だから、自戒をこめてバナナって呼んでやってんだ」

「なるほどなぁ」

いつしか、殿の視線は、美談を語る人のものになっていた。
っていうか、会長まで。●子の部屋でゲストの話を聞く●子さんのような顔になってますけど?
この空気に流されるのは止めて下さ~~い!!


俺は放課後に巫女さんを連れてくることを約束して、なんとか教室へと返してもらった。

教室で少しだけ情報を集める。
幸い、巫女さんはあれほどの美人だ。

すぐに彼女の存在するクラスは突き止められた。良かった。
美人って素晴らしいですね、巫女さん!!



しかし、俺は情報を集めるとき同時に、皆から

『お前、あのナルの知り合いだったんだー』
『よく付き合ってられるよね~?』

と、投げつけられる同情とも軽蔑とも分からない、冷たい視線を受け止めなければならなかった。