「ほほほほほ、本名?」

突然、殿が今まで聞いたこともないほど素っ頓狂な声をあげた。

目が泳いでる。
ささっとものすごい勢いで血の気が引いている。

これほどうろたえている殿を見たのは初めてだった。

「ななななな何を言ってるんだい、会長。
本名なんて、所詮飾りさ。偽りだよ。
ケーキに例えればただのクリームさ。
人間、大切なのは中身だよ、な・か・み」

ケーキに例えればクリームって何だよ。
なきゃ困るじゃないか!

「いいか?
そんなちっぽけなことにこだわっているようじゃ、お前も所詮この学校の生徒会長止まりだな」

へん、と。
徐々に自分の言葉に勇気付けられてきたのだろうか。

あんなにうろたえていたくせに、突然態度がでかくなるから怖ろしい。

それに、生徒会長と言えば生徒の最高峰だぞ?
そこで止まっても別にいいんじゃないのかなぁ。

「もっとでっかくなりたくないのかっ」

放っておいたら、「あの夕日に向かって走れ!」と言って自ら先頭を切って走り出しそうなオーラを纏って、殿が会長を説得していた。

「もっとでっかくなりたいよ、俺」


な、流されないでください、会長!