ふっふっふ、と、不敵な笑みを浮かべて殿が笑う。

「部活設立申込書を取りに来てやった」

「持ってけよ」

投げ捨てるように生徒会長が言う。その目線が、書類のあり場を物語っていた。

ちっちっち、と、殿は人差し指を立てて横に振った。
むしろ斬新。

部活以外の殿ってそんなに見たことがなかったけど、どこでも誰にでもマイペースを貫くんだなぁ、この人は。

「何言ってんだよ。
今すぐ承認しやがれってんだ。俺は殿だぞ」

全体的に言ってることがめちゃくちゃなんですけど……。

「部の名称、活動内容、使用できる部室の確保、顧問の教師の確保、そして最低5名の部員が必要だぞ」

さすが生徒会長。そういうことも全部頭に入ってるんだなと、俺はしばし感心する。

「うーん、一人足りないかー。
お前、なってろよ」

「……は?」

「そうそう、これで完璧だな。
俺だろ、巫女ちゃんに剣道、バナナにお前、と」

……やっぱり俺、その怪しげな集団に入っちゃってます?
がくりと俺は肩を落とした。

すらすらすらと、ものすごい勢いで申込用紙に記載していく殿。

「これでいいだろ?今すぐ承認しろ、承認」

殿が、その用紙を生徒会長の鼻先につきつける。
知らない人がこの場面から見たら、イケメン悪徳商法の詐欺師が決死の取り立てに来ているような迫力を感じるだろう。

実際はよく分からない部活動の設立申し込みをしているだけなのだが。

「お前、アホかっ。
名前くらい本名で書けっ」

至極まともだ。
やっぱり、生徒会長くらいまともじゃないと。

うんうん、と、俺はひとりごちて頷く。