え?そんなに憂鬱なら写真部を辞めればいいんじゃないかって?

甘いね、君。
うちの部活の制度を知らな過ぎる。

うちの学校って、「入部届け」にサインをして入部してしまうとその活動はほとんど義務だとみなされるのだ。
つまり、部活に参加しないと内申書に響くってワケ。
もちろん、「退部届け」にサインすれば退部できるよ?

でも、その「退部届け」の用紙は顧問か部長に貰わなきゃいけないの。
くれるわけないだろう、あの二人が。
しかも、殿は一年生のときから写真部の部長だったんだって。これ、ちょっとした伝説。

だから、俺が写真部に入部した時――つまり一年前――には、当然に部長だった、というワケ。

「さ、行こう行こう」

殿はさくさくと歩き出す。

「どちらへ?」

念のために聞いてみる。まぁ、無駄なんだけど。
行き先が星だろうが月だろうが、殿が行くなら俺も着いていくほかないっていうのが正直なところ。
俺は半分諦めている。
なにせ、いつも運が悪いのだけど、今日はとびきりだ。
朝からずっとツイテナイ。

「ほんっと、鈍いなー。
そんなんじゃモテないぞ」

……余計なお世話です。
っていうか、殿も多分にモテてはいませんよ。
いろんな意味できゃぁきゃぁ言われていますけど。

いっそここで、『陰ではナルって呼ばれているの知ってます?』ってぶちまけてやろうかと思った。もちろん、ナルシストのナルだ。
でも、俺はこのごろ思う。水に映る自分の姿に恋して死んでいったというナルシスだが、それでもここまでのアホではなかったはずだ。……多分。
だいたい、自分の姿に恋して死んでいったほうがまだマシだ。周りに迷惑かけないだけでも。

はぁ。
ストレスの限界。