翌日。

俺は重たい気分と、軽い身体(痩せたわけでは決してない。荷物を全て部室に置きっぱなしにさせられただけだ)で高校へと向かった。

「早いねー」

部室のドアを開けた、その目の前。
テーブルの上に長い脚を乗せて悦に入っている美しい高校生――殿がいた。

一番逢いたくない人だ。俺は朝からツイテナイ。

「あ、おはようございます、殿」

「おはよう。
昨日の写真、気になって早起きしちゃったんだよね。
現像、まだしてなかっただろ?でも、誰かが現像してくれてたみたい。助かったー。
それにしても、やっぱり俺ってイけてるよね」

……イっちゃってるの間違いでは?
とはもちろんいえないので、曖昧に「はぁ」とか言ってみる。

それにしても、朝からハイテンションでよく喋るなー、この人。

「でもさ、巫女ちゃんに言われるまで全然気づかなかった」

「何が、ですか?」

忘れたかった昨日の話を蒸し返されて俺は思わず生唾を飲む。

「これこれ」

ひらひらと、殿が自分の写真を振ってみせる。
絶対にフィギュアスケートの選手しか着ないようなひらひらの衣装に、銜えた赤い薔薇。どれだけ端整な顔立ちと、均整の取れた身体つきでも、これで笑えない写真が作れるほうがおかしいというものだ。
俺も慌ててこみ上げる笑いを飲み込むのに必死。

「俺、自分しか見ないから気づかなかったんだよね。
この、後ろに写る白い影」

言って、殿が写真の背景部、つまり殿の左後ろを指差した。

……うっそだろ?!
俺は思わず目を剥く。