「どうして稲葉さん、ここに??」

首を傾げる結衣ちゃん



『いや…ちょっと、ね?』


吉田と会っていたことは伏せといたほうがいいだろう、

そう判断したのだ。



「あ、そう言えば稲葉さんに聞きたいことがあるんです」



『ん?なに??』


結衣ちゃんの目は好奇心で輝いていた。



「よっしーって高校生の頃、勉強できなかったんですか??」

思わず笑い出す僕


ちょうどさっき思い出していたことだった。



『吉田はね、スポーツはできるけど勉強は皆無

おもしろくらいにできなかったよ』


こんなこと吉田の生徒に教えていいのか迷ったけど…

でも、結衣ちゃんだしね。


「やっぱり…そうなんだ。

さっき、よっしーに勉強教えてもらったんです。


でも、先生なの?って言いたくなるくらいできなくて。

スポーツバカですよね」


そう言う結衣ちゃんの顔は笑顔で。

やっぱり吉田が好きなんだ。


こんなにも笑顔なんだもん。

好き以外の何ものでもないよ。



『じゃ、病室戻りますか!お嬢様!!』


下がりそうなテンションを無理矢理上げて冗談を言う



「お嬢様じゃありませ~ん」

結衣ちゃんは笑いながら僕の後ろを着いてくる。


ね、結衣ちゃん?

気づいてる?
僕の…キモチ。









―Side 稲葉翼 終―