『あーもう、こんな時間
俺…帰るから。
稲葉、俺の分まで頑張れよ!!』
吉田はそう言って去っていく。
ホントに分かってないなぁ…吉田は。
俺は首を振りながら席を立つ。
「…………あれ?
稲葉さん…??」
そこへ聞いたことのある声。
僕の……な人
『あれ?結衣ちゃん?
なんでこんなところに…??』
いつものジャージ姿で松葉杖の結衣ちゃんがベンチに座っていた。
「ずっと病室にいるのも飽きたんで…」
そう言いながら照れ笑い。
『そうなんだ』
僕はそう言いながら結衣ちゃんの隣に座った。
結衣ちゃんは今時にしては珍しい子で。
年上の僕にちゃんと敬語で話してくれる。
患者さんだとタメで話してくる子もいるのにね。
ただ、少し寂しくもある。
だって僕と結衣ちゃんの間に線があるみたいじゃないか。
敬語で話す
たったこれだけで壁を感じてしまうんだ。
こんなこと、今まで1度もなかったのに…