『な、稲葉
この問題、教えろよ』
授業中、吉田が小声で話しかけてくる。
僕は断れないタチの人間で。
だから吉田の質問に答える。
『あ、なるほどな
さすが学年1位』
吉田はそう言って黒板と向き合う。
今の言葉。
コイツは嫌味として言ったワケじゃない。
ただ、本当に感心してくれたから言ってくれた言葉で。
ま、事実僕は学年1位だった。
だから決して間違ってないんだけど…
分からない。
吉田はまったく読めないんだ。
ちなみにコイツはスポーツ万能で、格好いい。
そのくせグレてなくて授業は真面目に受ける。
なのに成績を一向に上がらない…らしい。
どういうことだろう。
一方僕と言えばスポーツはほどほど
頭は結構いい方。
そして特別格好いいワケではない。
吉田に勝てることと言えば頭だけ。
でも吉田は僕のことを尊敬してくれていて。
僕と吉田の関係は…よく、分からないんだ。