「あ…いや…その……」

なんて言葉をかければいいのか分からなくてどぎまぎする私。

稲葉さんは俯いたまま黙ってて。


どんな表情をしているか分からない。

それが私を余計に不安にさせる。



「………稲葉…さん??」

恐る恐る声をかける。



『いーよ、いーよ
結衣ちゃん


僕等の仕事は一時だけの付き合いだもん

僕と逢えなくなったって寂しくないもんね??』

いじけ顔の稲葉さん


その顔…ヤバす、です。

初めて見た稲葉さんのその顔に私の心臓は大きな音をたてる。


「あ、いや…寂しい…です、よ?」

慌てて付け足す。


もうあの顔は見てられない。



『お世辞なんて結衣ちゃんの歳で言わなくていいんだよ?

もっと大人になってから使いなさい』


なぜか先生口調で。

なんだか新たな稲葉さんを見た気がする。



って私…まだ、子供なのかな?

一応…大人になったつもりだったのに。


稲葉さんには…子供に見えてたのかな?

だったら私は…恋愛対象じゃないよね。


子供に恋愛感情…抱かないもんね…