気が付けばもう残り時間は少なくなっていた。
『結衣ちゃん、退院いつ??』
稲葉さんは右足のマッサージをしながら首を傾げる。
「今週の土曜です」
あと…2日
入院生活はあと2日
稲葉さんと一緒にいられるのもあと2日
『そっかぁ~
もう、退院なんだ。
よかったね』
稲葉さんはそう言って笑う。
私は苦笑いを返す。
だって、よくなんかないんだもん。
そりゃあ?
不便なこともたくさんあるよ?
テレビ見て大声で笑えないし、
1人の時間はまったくないし、
お風呂だって週3回しか入れない。
でも、いいことだってある。
料理はなかなかおいしいし、
看護師さんは優しいし、
何より…稲葉さんに会える。
『あれ?あんまり嬉しそうじゃないね?』
そう言われ、稲葉さんを見ると不適で意地悪そうな笑みを浮かべている。
「そ、そんなことないですよ!!」
慌てて否定。
嬉しそうじゃない、その通りだ。
だって事実、嬉しくないんだもん。
『あ、分かった。
僕に逢えなくなると思って寂しくなったんでしょ?』