『そう言えば稲葉はいないのか?好きな人』

机の上に置いてあったコンビニ弁当に箸をつけた僕の手が止まる。



『今は…いないかな』

そう答えた僕の頭の中には1人の人の顔が浮かんでいた。

でもきっと、違う。


好き…じゃない



『ってか、今日言ってたろ?

僕はロリコンだ、って。
あれ…マジなの??』

飲んだお茶が肺に入りそうになってむせる。

まさか…あの言葉、聞かれてたなんて。



『ロリコン…って言うのは大袈裟だけど…

でも年上は苦手』

なるべくいつも通りを装う


『へぇ~

稲葉がロリコンね~
ちょっと、意外』

ニヤッと笑う津川


『だからロリコンじゃねぇ~って!』

そうは言ったものの内心は焦りまくり。


だって僕の頭の中にいる人はかなりの年下で…

きっと津川に話せば


『やっぱりロリコンじゃん!』


と、言われるのがオチだろう


このことは、誰にも言わないでおこう。


僕の頭の中に誰がいるのか


その人に僕がどんな想いを寄せているのか


絶対、誰にも言わない。









―Side 稲葉翼 終―