『はい、ラストラ~ン』
ラストラン=もう1周
稲葉さん…絶対Sだ。
しかも『ド』がつくSだ。
だってそう言いながら満面の笑みを浮かべてるんだもん
「………はい」
小さく返事をして進む。
隣にいる稲葉さんはやっぱり笑ってて。
さっきまでは天使の笑みに見えたのに
今は悪魔の笑みにしか見えない
でもやっぱり…好き。
そういうところも、好きなんだ。
あー…もう、ダメ
こんなことを考えてる私は終わってる。
怪我でどん底だったのに
たった1人、稲葉さんに出逢ったおかげで
深い闇から簡単に抜け出せた。
やっぱり私は…単純だ。
『よし、休憩しよ~』
さっきの場所まで来ると稲葉さんはベットに座る。
その隣に私は腰をおろした。
グルッとリハビリ室の中を見渡すと患者さんの数が減っていて。
10人近くいたはずなのに今は私を含めて3人くらいしかいない。
思ったより、ここは広くて。
それなのに稲葉さんと私はこんなにも近くにいる。
いつか…心が近づく日は来るのだろうか
……って、あるワケないか。
年の差はきっと10歳以上
稲葉さんの恋愛対象じゃないよね…私って。
でも、それでもいいと思える私は
稲葉さんにぞっこんなんだ。
あと、6日
稲葉さんと共有できる時間はたった、6日