『よし、じゃあ松葉杖で歩こうか』
そう言われ松葉杖を渡される。
重い腰を上げて松葉杖を握った。
やっぱり足が重い。
ゆっくりと松葉杖をつき部屋の中を歩く。
『そう言えば、結衣ちゃんさ松葉杖誰かに教えてもらったの??』
近くにあったベットで休憩している私の横に稲葉さんが座る。
あまりの近さに収まったはずのドキドキがまた激しくなる。
「あ…いや、独学です」
そう私が言うと稲葉さんは笑う。
『独学かぁ…
にしてはうまいよね』
褒められた私はくすぐったくて仕方ない。
頬が緩みそうになるのを必死で堪える。
「そんなことないですよ」
軽く笑ってそう答える。
心臓は相変わらずドキドキとうるさい。
『謙遜しちゃって~
はい、んじゃあ立って
で、独学の腕前…見せてもらおうか』
ニヤニヤと笑う稲葉さんは設置されたミニ階段を指さす。
階段…階段かぁ…
これは1番の難関だ。
あまりに憂鬱で溜め息が溢れてしまう。