『ん?どうした?

もう疲れたの??』


動かなくなった私を稲葉さんは優しい目で見つめる。



「いや…大丈夫です」

そう答え、またおしりを上げる。


その目もイヤ


私にだけ向けられているんじゃないと分かっているから苦しい

苦しいよ…



稲葉さんから目を背け、天井を仰ぐ。

単調な白の天井


おもしろくない風景



『よし、ケツ上げはそれくらいにしよう!

次は腹筋』


はい、と言われて手を頭の後ろで組み腹筋

でも腹筋は大の苦手で…


『ほらぁ~ちゃんとお腹に力入れなきゃ~』


と、稲葉さんに笑われる。


その笑顔を見てるとどうでもよくなった。

いいや、なんでも。


少なくとも稲葉さんの中に私は存在してる。

患者の成田結衣として。



稲葉さんの中にいるのならそれで、いいや。