『こんにちは、成田さん』


ニコッと笑った謎の男の人の笑顔に私は惹かれた。


一瞬の出来事。


ホントに一瞬


恋に落ちるのに時間は要らない

と、言うけれどこれは本当だ。


この屈託のない笑顔で笑うこの人はいったい、何者…??



『僕はリガクリョウホウシのイナバです』

そう言うと自分の服を指さすイナバさん


胸より少し高い位置には

『理学療法士 稲葉』

と、書いてあった。


私の中の辞書に

『理学療法士』

なんて言葉は存在しなくて。


でも浅田さんはさっき「リハビリ」そうはっきりと言った。

だからきっと、この稲葉さんはリハビリの先生だ。



『じゃあ今日からリハビリ始めましょう

あとでまた迎えに来ますね』


笑顔が特徴の謎の男の人…稲葉さんは病室を出て行った。



何事もないような顔してシャーペンを握った私だけど

心臓が暴れていたのを今でもしっかりと覚えている。