3時間と30分なんてあっという間に過ぎてしまった。
気づくとベットは病室から出て、廊下を通る私
なんだか恥ずかしい。
自分はベットに寝ていて廊下を通る、なんて。
なるべく天井だけを見つめるようにしていた。
『怖い?』
西表さんにそんなことを聞かれる。
でも私は首を横に振って笑いながら
「全然」
と、答えた。
不安も
恐怖も
何もなかった。
不思議と何も感じない私はきっとおかしくて。
多分…どん底だったから。
幾らだって笑顔は浮かべることはできる。
幾らだっておかしいことを言える。
心の中の想い、キモチ、全てを封印すればなんだってできるんだ。
それはきっと、世間一般で
『見栄を張る』
そう言うんだと思う。
でも見栄を張ってなくちゃやれないことだってある。
それが今の私。
手術が怖くないのは怖さを感じられないくらいに
他の想いで埋め尽くされた心のせい。
『絶望』
このときの私は…いや、怪我をしたあの日から私の心の中にはこの言葉しかないのだ。