『あ、そうだ。
もうすぐ莉巳ちゃん来るんだった』
と、言う津川さんの発言のすぐあとだった。
「莉巳ちゃん到着です」
なんて声が聞こえたのは。
『じゃあ稲葉と2人、見てくれるかな』
私は頷き、足を上げたまま車イスにのる莉巳ちゃんのもとへ寄る。
「こんにちは」
「こんにちはー!!」
あの頃の莉巳ちゃんがウソのような中学生らしい笑顔。
それを取り戻したのは私ではなく、稲葉さんだ。
「向こうまで松葉杖で行こっか」
私は莉巳ちゃんに松葉杖を渡す。
こうしてみると、思い出す。
自分のケガをしてたときのこと。
私も稲葉さんに松葉杖を渡され、重いギブスを引きづりながら歩いた。
「稲葉さんの隣まで行ける?」
そう聞くと莉巳ちゃんは満面の笑みで頷いた。