「いや、懐かしいなぁーって。」

本当は、それだけじゃない。


蘇るのは記憶だけじゃなく、

あのときと同じ感情も蘇る。


少しずつ肥大していくこの感情は誰にも止めることができない。

私自身も。



『7年ぶりだっけ?


結衣ちゃんもすっかり大人になって。

僕はすっかりオジサンになっちゃって。


7年ぶりなのに、あんまり距離を感じない。

……のは、僕だけかな?』


「そんなことないですよ!

私も距離なんて感じてないです」


そう言うと稲葉さんは笑う。


この時間がいつまでも続けばいいのに

そう思ってしまう私は浮かれすぎだろうか。



稲葉さんの笑顔が私だけに向けばいいのに

そう思ってしまう私はどうかしてしまったのだろうか。



『じゃあ明日ね。

迎えに来てね、とか言ってみたり』


ケラケラと笑っている稲葉さんにさりげなくボディータッチ


「冗談はほどほどにお願いします!」



リハビリ室へ帰る道のりがやけに長く感じたのは

さっきの時間があまりにも楽しかったからだろうか。


明日から何日間かは毎日稲葉さんに会える。


そう思えるだけでウキウキしてしまう私は


相当、単純だ。