『にしても、ビックリしたよ』
稲葉さんはベットに倒れ込む。
「何がですか?」
『結衣ちゃんが理学療法士になった、って聞いてだよ。
津川が興奮気味に来たから何事かと思ったらそういうことだったんだ。』
顔だけを私の方を向ける。
「ここだけの話、稲葉さんに出逢ったからなんです」
そういうと稲葉さんは目を丸くした。
「稲葉さんが仕事してる姿見て、格好いいな、って。
楽しそうだな、って。
それからです。
私がこの仕事に就こうと思ったのは。」
『嬉しいこと言ってくれるね』
稲葉さんはそう言って微笑んだ。
懐かしい。
そうとしか表しようがなかった。
だって7年ぶりだよ?
四捨五入すれば10年ぶり
懐かしいなんて言葉じゃ足りない。
『ん?なんか僕の顔についてる?』
黙ったまま稲葉さんの顔を見つめる私。
稲葉さんは不思議そうに首を傾げた。