「みんなね、言うんだ。


切るなんてバカなことするな、って。

死ぬなんて言うな、って。


もう耳にたこができるくらい聞いた。


先生も…言う?


何やってるの、って。

生きてたら楽しいことたくさんあるよ、って。」


まばたきも忘れるくらい、ビックリした。


そして、どこをどう探っても言葉は見つからない。



こういうとき、なんて言えばいいんだろう。

莉巳ちゃんの言う通り、私は



『切らないで』


『死なないで』


そう、言おうと思ってた。


でも莉巳ちゃんはそんな軽い言葉、求めてない。



もっと、優しく


もっと、温かい言葉。



………ダメだ。

浮かばない。


莉巳ちゃんは私をジッと見つめたまま。




そして、それは突然のことだった。

目の前に影が現れたかと思うと大きな体が莉巳ちゃんを包み込んだ。



この後ろ姿…






















稲葉…さん?