最低だ…私。
プライベートと仕事との区別もできないなんて。
『結衣ちゃん、思い詰めなくていいよ。
俺があんなこと言ったからでしょ?
ごめんね…』
津川さんはそれだけ言うとすぐに患者さんのところへ行ってしまった。
私は手で顔を覆った。
どうしてか、手の震えが止まらない。
すぐそこに、
手の届くところに、
ずっと、
ずっと、
ずーっと逢いたかった人がいる。
津川さんは稲葉さんに会いに行くかと聞いた。
でも私は…断ったんだ。
だって…逢えないよ、今さら。
もしかしたら稲葉さんは私のことなんて忘れているかもしれない。
それが怖いから…だから、逢えない。