『まあ奥さんが料理作るの好きだからね。

卵焼き…食べる??』


差し出された津川さんの卵焼きをもらう。



「んっ…おいひぃ…!」

ふわっと広がる卵焼きの甘さ。

うちのお母さんより数倍もおいしい。



『でしょ?

俺もこの卵焼き、好きなんだよね』


笑顔で自慢する津川さんを見ていると奥さんへの愛がとても感じられた。



『あ、そう言えば、稲葉のことなんだけど…』


突然、出てきた稲葉さんの名前に私の心臓は大きな音をたてる。

どうしてだろう。


ただ、名前を聞いただけなのに。



「稲葉さんが…どうしたんですか?」

いつも通りを装って精一杯の一言。


津川さんは私の異変に気づかず、口を開く。



『アイツさ、実は今…入院してるんだよね』