『さて、そろそろおいとましようかな』


稲葉さんはさっきまで書いていた用紙を机に置くと言った。


その言葉に鼓動が速くなる。



『リハビリ、頑張ってね』

ニコッと私の好きな笑顔を見せる稲葉さん。


そして、胸ポケットにペンをしまうと病室を出て行ってしまった。



できることなら、引き留めたかった。


できることなら、好きだと伝えたかった。


でも、そんな勇気…私にはない。


だから、このまま…別れ。

もう一生逢うこともないでしょう。



稲葉さん…好きでした。


本当に、大好きでした。

たった、7日


7日だけだったけど、

心の底から好きだと、はっきり言えるくらい、好きです。



溢れそうになる涙を堪え、

動かない左足に拳を、打ち付けた。


この足が動けば、

追いかけることができるのに。



稲葉さん…っ


稲葉さん…っ








「……………稲葉さんっ!!!」