「夕食ですよー」
そういう声とともにかぼちゃの煮付けの匂いが…
稲葉さん、来ないのかなぁ…
結局、夕食の時間まで来なかった。
来るって言ってたのに…
夕方行くから、って言ってたのに…
溜め息混じりでご飯を食べ始める。
気分がのってないせいか、ご飯がおいしくない。
今日で病院食の夕飯は最後なのに。
もうこの味は食べられないかもしれないのに。
「はぁ~…」
溜め息で始まった食事は、溜め息で終わった。
これは稲葉さんのせいだ。
早く、来てくれない稲葉さんが悪い。
『………こんばんわー』
と、そこへ私の大好きな声。
『あれ?ご飯中だった?
じゃあまたあとにしようかな…』
そう言って去っていこうとした背中に
「もう食べ終わりしまたよ!」
と、大きな声を投げかけた。