それからの時間は、あっという間だった。

最後だから、頑張った私。


ちょっとでも手を抜いておけば、
もう少し稲葉さんと同じ時間を共にできたかもしれない。


でも、終わりは来てしまう。

避けようと思っても避けれるものじゃないんだ。



『じゃあ…また夕方にね。』


いつのものようにリハビリ室の出入り口で稲葉さんに見送ってもらう。



「……ありがとうございました」


零れそうになる涙を堪え、笑顔を浮かべる。



またあとで逢えると分かっていても泣きそうになるのはどうしてだろう。




……分かった。

私と稲葉さんの時間は、ここで刻まれていた。


だから…ここでの稲葉さんとの時間は最後。

そう思うだけで泣きそうになってしまうんだ。



って…私、どんだけ好きなんだろう。

稲葉さんのこと。



泣きそうになるくらい好きだなんて

自分の…想像以上だな…