『もーヤだ。

2人して俺をからかうんだから…』


津川さんはわざと大きな溜め息をする。

そして立ち上がると


『稲葉と一緒に食べようと思ったけど、もう知らねぇ!

1人で先に昼飯食ってやる!!』

そう言ってどこかへ行ってしまった。



「良かったんですか?稲葉さん」

そう聞くと



『まあ気にしなくていいよ。

なんだかんだ言って僕のこと、待っててくれてると思うから』

と、余裕の笑み。


稲葉さんって案外主導権握っちゃう人なんだ。

今の発言を聞いて思った私。



『さて、そろそろガチでやろうか?』


「………はい」


やる気のない私の声は小さくて。


だって…やりたくないんだもん。

できることならずっと、ここにいたい。


無理だと分かってても、
そう思わずにはいられなかった。



『……結衣ちゃん?

大丈夫??』


立ち上がったまま動かない私の顔を覗き込む稲葉さん。



「あ、大丈夫です。」


私はそう答え松葉杖で歩いて行く。