『失礼しまーす』
午前11時
いつもこの時間は勉強の時間。
杏子たちは授業受けてるワケだしね。
『…………ーい?
おーい!!』
顔を上げると
「え…あれ?」
稲葉さんがいて。
私はイヤフォンを外す。
『こらこら。
僕の声が聞こえないくらい大音量で音楽聞いちゃダメでしょ』
笑いながら怒る稲葉さん。
私は急いで音楽を止めた。
勉強するとき音楽を聴くのが私のくせで。
その音楽というのは大音量で。
まあギリギリ音漏れはしてないと思うくらいで。
「なんで…稲葉さんが?」
いつもおばさんが来るのに。
『僕じゃ不満かな?』
とんでもない、そう言って首を横に振る。
『今日はね、僕の患者さん少ないから。
最後に迎えに来たんだ。』
まさかの展開に驚きながらも服装を直す私。
と、言ってもジャージ姿。
直すほどの服装でもないんだけどね。