ワイワイ騒ぐ仲間たちから離れて廊下へ出た。



傘立てに立てられてある赤い傘が目についた。

あずの傘だ。


俺、知ってるから。






そのあずの赤い傘を見つめながらため息をついた。






「何ため息なんかついてんだよ。」


教室から出てきた透が優しい笑顔でそう言って
俺の隣に壁にもたれるように並んだ。







少し静かな時間が流れた後、透は言った。



「俺、昨日あずちゃんに告白した。………キスも…した。」





キス!?



俺は驚いて隣にいる透を見た。



そんな俺の反応が少し面白かったのか透は笑う。


「そんな顔すんなよ〜、孝之だって俺があずちゃんに気があるの知ってただろ?」



『うん…まあ…そうだけど。』





俺はもう二人が付き合ってしまうことしか考えられなくて、動揺を必死で隠そうと俯く。






「…孝之…俺があずちゃん奪ってもいいのかよ…?…お前だって…あずちゃんのこと好きなんだろ…?俺よりずっと前から。」