さっきから頻繁にメールが届いている孝之の携帯に、私も気になってないわけじゃない。
私は漫画を閉じて孝之を見る。
『……彼女……?』
実際、気になっていても怖くて聞けない一言は無意識に口をついて出た。
孝之はチラッと私を見て
「そんなんじゃねーよ。」と答える。
私は黒の小さなテーブルに肘をついて孝之に問う。
『孝之って………本気で好きな子っていないの?』
「なんだよいきなり。」
カチカチとメールに返信する孝之に半分イライラしながら続ける。
『だって…色んな女子と…噂あるからさ。』
テーブルの上に置いてある孝之の香水を人差し指で触る。
いつから孝之はこんなに大人っぽくなったの…?
「………………いるよ。」
えっ?と言うのが声にならない代わりに、香水のボトルが小さくカタンっと音を立てた。