振り返った楓に、和幸は問う。

「なんだ、終わったのか」

それは、楓の表情からあらゆる『展開』を予想、想像、そして得られる状況から達観しての言葉である。

楓はメガネをかけた。

「ええ。霊はいましたが、事件とは関係ありませんでした。成仏してしまいましたし」

「ずいぶん優しい成仏だね? 僕には剣を突き立てたくせにさ」

肩をすくめて皮肉る桜庭を、いっそ楓は無視する。

「戻りましょう。自殺を強要した犯人は、どうやらあの宿にいるようです」

和幸が苦笑。

「あ? 宿って……おいおい」

「それって可能性的に、あのメンバーの中に犯人がいるってことになるねぇ」

と桜庭。

ざくざくと落ち葉を踏み締めながら、三人は山を下っていく。

「ここにいた霊は孤独で、周囲へ気付いてほしいという念を送っていたようです。できることはそれだけ。人を呪う力はありません。その霊が教えてくれました。あの宿に、霊っ同じく、気付いてほしいという念を放出しながら、同時に、死んでしまえ、と言っているだれかがいるようです」