「だいたい、本当に霊なんているのかい?」

と桜庭。どこかおちょくった風な口調なのは、はなからあの三人を見下し、その乱れた心を嘲笑っているからである。

楓は前を向いたまま。

「私は人外ではないので、感覚的に霊を捉えることはできません。ただ――」

メガネを、外した。

「もしも『本当』にいるのなら、それが『真実』なら、私には見えるはずです」

楓は世界の『真実』を見ることができる。彼女に『嘘』は聴かない。詳しくは『剣の粛正』で。

ほんの少し眉間にしわを寄せる楓が、立ち止まる。

和幸が問う。

「どうした?」

「……なにか、いるようです」

「霊かい?」

と桜庭。

楓は、すぐには答えない。眉間のしわが深くなる。

合わないピントを調整するように、目がすがめられた。

楓は森の中に、真っ白い着物の女性を見る。

吹く風と戯れるように、女性はくるくると回っていた。

ただ、手足の先は霞み、体は明滅を繰り返し、全体がはっきりと揃わない。

「霊……ですね。ですが、なんて稀薄な存在感……ほぼ空気のようなものです。小名木くんや桜庭くんには、どれだけ目を凝らしてもわからないかもしれません」