上江の敬語は、堅かった。わざとらしいくらい、まるで小説の文体のように、アクセントまでが堅い。

一二三が腕を組んだ。

「しかし、事態はすべて自殺に基づいてる。理由の有無に関係なく、状況が自殺でしかない。……それとも」

その眼差しが、ひときわ、冷ややかになった。

「なにか、ほかの理由を隠している?」

ぴくりと、浅野の肩が跳ねた。図星らしい。

幹は見逃さない。

「そういうところも話してもらわないと、こっちも困っちゃいますよ。白状してください……とアルさんが」

慌てて付け加えたのは、よほど言及されるのが不機嫌なのか、柴尾の眉がギリギリ音をあげんばかりにねじれていたからだった。

上江と顔を見合わせた浅野が、言った。

「実は、この宿の裏手の山に……」

「宿の裏……? あ、なにか、あるかもしれないっていう話ですか……?」

「知ってるの?」

「えっと、まあ」

賢一は曖昧に濁す。さすがに、アルが情報を自分達にすべて話していると言ったら、信用の低落である。