タオルを肩に引っ掛けているだけの堂々とした仁は、ふくよかな胸を歩く度に揺らす。

ざぶん、と湯につかり、「うあ~」とまさしく年より臭い声をあげる。

仁は言った。

「んなこと言うと男湯にゃ、吸血鬼と三つ目鬼と〝九尾の末裔〟と傲慢者と……数えんのがめんどいな。むしろ男湯を粛正してこい、楓ちん」

「か、楓ちん……」

奇妙なニックネームに固まる楓である。

「それにだな」

と、仁は続ける。

「どうせ過去と未来もしっちゃかめっちゃかだろ。今脱衣所じゃ、賢一の姉貴分が脱ぎ脱ぎしてんだぞ。いろいろ気にするない」

大きく幹がうなずいた。その手はいつのまにかジンジャーエールの注がれたグラスを持っている。

「そうだよぉ、楓さん。あたしなんてさ、楓さんが生きてる時代にはきっとおばあちゃんか、最悪死んじゃってるよ? そんなのやだねぇ」

「(ブクブクブク)」

真輝が突然立ち上がった。

「ちょっと一二三! 今アナタ水面下で言ったわね!? 『母上は三頭身ぐらいのよぼよぼだろう』って言ったわね!? 言ったわね!?」

かしましいサービスシーンである。