「ほかにも証言というかね……彼の親友だという太田くんは、彼が自殺するような悩みを抱えていたとは思えないし、むしろ、自殺するような後ろ暗い思考もしてないって言ってたよ。

彼の恋人の浅野さんの友人、上江理緒さんも、彼が自殺するとは思えないって。明日は五人揃って、この宿の裏手にある山へ散策に行く予定だったらしいよ。これは野々村くんの提案で、彼は裏山に関してのオカルト情報をわくわくと語ったらしい。そんな人が自殺をするはずがない、ってさ。

それから、野々村くんとは太田くんを挟んでの友人である柴尾くんも、野々村くんの性格なんかを詳しく知らなくても、まさか、自殺するようなタイプには思えないってさ」

「つまり、『自殺するとは思えないのに自殺した』ってことか」

「簡単にまとめちゃえば、そうだね」

推理好きな幹が、そこで先手を取る。

「じゃあつまり、その友達四人は、野々村さんがだれかに殺された、と思ってるの? もしくは、無理に自殺させられた」

「おっ、幹ちゃん鋭い。そうなんだよね。絶対だれかの仕業だって言って聞かないんだ。調査するまでもないくらい見事な自殺なのに」