楓が言う。

「超常を隠匿する義務として、みなさんには極力、自重してもらいます。いいですね?」

「異論はない。あれこれ追及されたら敵わん」

仁の答えに、だれしもがうなずく。言われるまでもない。

真輝が話を戻した。

「それで? 自殺なら、特に問題はないでしょう。このまま警察を待てば問題ないじゃない」

「ところがね、死んじゃった野々村くんの友人が、そうはいかないって言うのさ」

「なぜ」

真輝の追及は端的で鋭い。見れば、一二三も同じような目をして、アルを睨んでいた。

なるほど親子だ、と下らないことを納得しながら、アルは答える。

「野々村くんね、自殺の理由がないらしい。今日一緒に来てた、残りの男女二人ずつ、その中のひとり、浅野幸子さんと恋人らしいんだ。それも、ついこないだ付き合いだして、ほっかほか。野々村くんも受かれてて、まさかそんな心境で自殺なんてするはずないってさ」

「それだけの理由かよ?」

と、今度は和幸の追及。和幸は達観者。事実を事実として、正確に捉えようとしている。