宿があるのは街ではなく、山奥である。

空気の美味しい山の隠れ名旅館……というのが売りの宿である。

そのため、警察が来るのは距離的に、どうやら明日の夕方になってしまうらしい。

真輝らの待つ部屋――三号室、虎の間へ戻ったアルは、

「鑑識なんかがいないから詳しいことまでははっきりわかんないんだけどさ」

手帳を片手に説明を始めた。

全員、畳間で円を描くように座っていた。

「死亡者は野々村銀次くん、大学二年生。ラガーマンみたいでね、結構ガタイがよかったよ。死因はほぼ間違いなく、首吊りの窒息死だね。で、一緒に来ていたのが、その友人。なんか、大学とは別に同好会を持ってたらしくてね、その集まりらしいよ」

「なんの同好会だ?」

と、あぐらを掻いている仁。

「うん、おもしろいよぉ、彼らね、オカルト同好会」

ざわ……と、確実にだれもが焦った。

なにせ今この部屋にいるのは、真正の鬼と魔法使い、吸血鬼に三つ目鬼、人食い鬼と人狼、達観者に覚醒者、教会の粛正使徒、煤祓いの巫女……

これほど、その『対象』となりえる者らはいない。