悶絶して悔しがる桜庭の横で、和幸は「け」と笑った。

「だぁから、左だって教えてやったじゃんかよ。素直でねーの、お前」

「う、うるさいっ」

八つ当たりもほどほどに、桜庭はカードを背中で混ぜる。

そう。ババを取ったからと言って、まだ負けではない。

切り返す。アルにババを引かせればいい。

自分でもどちらがババかわからなくなるほど無作為にカードを混ぜた桜庭は、そしてアルに突きつけた。

「さあ、どっちだっ」

今自分でもわかる。右がババ、左が3である。

和幸が、

「アルさん、右っすよ」

と、助言。

桜庭は思わず、心中でにやけた。

右は、ババだ。

そう右はババ――

「わかった、右だね」

、、、、、
桜庭からは。

「!!」

素直に和幸の助言を受けたアルが抜いたのは、そして当然、3。

「あ、やったね、僕の勝ちだ、あがり~」

「っっっ!!」

桜庭、完全なる敗北である。

「よくもよくもよくもぉ――!!」

怒鳴る桜庭だが、まったくもって、自業自得である。

ババ抜き――究極の心理戦が行われた、その向こうから――