「さあ、早く選んで」

アルが二枚のカードを持ち、桜庭に笑んでいた。

一枚は、スペードの3。もう一枚は、鎌を持った骸骨である。

言うまでもない、ババ抜きのクライマックスである。

一緒に楽しんでいた和幸、香澄はとっくに上がり、アルと桜庭の一騎討ちになっている。

桜庭の手札は、ダイヤの3一枚。

つまり、あと一手で桜庭は勝てるのだが……

「さあ、どちらかな? 早く選んで」

アルのポーカーフェイス……いや、笑顔の前に、硬直している。

傲慢者として†覚醒している桜庭にとって、たかがトランプ遊びでも、負けることは耐えられない。

右か、左か……

「桜庭桜庭」

と、和幸が耳打ちする。

「左だよ、左」

「……本当に?」

と、桜庭が訊ねる。

和幸は達観者である。が、だからといって透視能力はない。

なにを根拠に左と言っているのか……

しかし、その達観力には凄まじいものが……

いやだが、和幸は自分を好いてはいないはず……

自分を勝たせようとするだろうか……

罠か?

ならば、左ではなく右……

いや待て。和幸は左と言っただけで、どちらがなんのカードとは言っていない。

どちらが、どっちだ?