「一二三っ!」

一喝とともに、赤い閃光が宙を走る速度で、真輝がラケットを振り抜いた。

バチンッ! という凄絶な音がし、ピンポン球はオレンジのビームのように打ち出される。

が!

「なにかっ、母っ、上っ!!」

バチンッ! と、対する一二三は見事にそれを叩き返した。

オレンジのビームが低い低い弧を描いて、真輝のコートへ。

キュゥッ、と、真輝のスリッパが鳴いた。

「母上と呼ぶな!」

スマッシュ!!
バチンッ!

ぶわぁっ、と、一二三の袖が舞った。

「なぜっ!」

ドライブ!!
シュパンッ!!

「老けた気がして――」

浴衣を着乱し、太ももを露出させながら、真輝が反撃。

「なんだか気にくわないのよ!!」

シュパーンッ!
ドライブをドライブで!!

凄絶な縦回転を伴った球が、一二三のコートで加速する。

バックステップを踏んだ一二三が、

「そんなことっ」

跳んだ。

「知らぬ!」

空中で、かろうじてボールを返す。

が、それは高くゆるく上がり、真輝側のチャンスボールになった。