「階段上がる時、良かったって何度も呟いてたの。素直じゃないから…あの人」

……無理に近いけど



頑張ってみようと思う。

「ねえ」

あたしは膝を丸めてお母さんに言った。

「あたしお母さんたちに絶対頼りたくないと思ってた」

「…そう」

「だから高校、行かなかった。今更この時期に、高校行きたいなんて思ってないけど」

「そう」

「でも、これからは頼る」

「…そう」

真剣にあたしの話を聞いていたお母さんの顔が、柔らかくなるのを感じた。

「今までの分、たくさんね」

あたしも、自分の表情が解れた気がする。

「…もう遅いわよ。部屋ちゃんと掃除してあるから、寝なさい」

いない間も、掃除してた?

「…ありがと…おやすみ」

お母さんにおやすみなんて言ったの、初めてだった。

「おやすみ」

優しい笑顔に見守られて。

あたしも二階への階段を上った。