「認めないし、応援はしないけど、あたしは少なくとも他の敦志ファンより近い位地にいさせてもらうからね!」
この女
実は優しかったりするんだろうか。
何となく考えた。
小さな小さな、敦志をめぐっての争いは、一ヶ月も経たないうちに、終わった。
「愛って呼ぶ、あんたの事」
気付けば女を見ていたあたし。
「はあ?」
女は馬鹿にしたような目で見つめる。
「女を名前で呼ぶのはあんたが初めて」
そう。
本当に、初めて。
だけどそれは、この女でもいいと思った。
愛でも、いいと。
「…淋しい人間ね。あたしが第一号になってやってもいいけどねっ」
「なんか仲良くなってねぇ?気のせい?」
敦志があたし髪を撫でる手を止めて、顔を覗き込んできた。
「馬鹿」
何となく、げんこつをお見舞いしてやった。
「今日は…二人で帰れば!ばいばい、あっちゃん」
敦志に話しかける時だけ、甘ったるくて可愛い声。
「…じゃあね、美香」
「うんばいば…」
……うえー???!!!
美香…。
美香…?
美香…!
初めてだ…。
「またね、愛」
「明日な、愛」
敦志も優しい顔をしている。