「…や…寒く、ねぇ?」
「…う…別に?」
確かに。着込んだつもりなんだけど。
さっむい。
「これ、着とく?てか、着とけ」
「っは?!」
バサッ、て。
背中に、コートが。
「あんたが、寒いじゃん」
「家近いし」
「返せないじゃん」
「アド、これ。書いてある。気が向いたら。そしたら返して。あ、俺んな怪しい奴じゃねぇから!」
「…」
何となく信用できたし、あたしは黙ってアドが書いてある紙を受け取った。
「じゃーな」
ぽん、と背中をたたかれ、敦志とかいう奴は行ってしまって。
あたしは紙をキュッとにぎりしめた。