「何逃げてんだよ!」

敦志が息を切らして言う。

あたしの腕は、捕まった。

「い、やだ…!!」

今は敦志と話したくない。

顔を見せたくない。

とんでもないことを口にしそうで怖い。

無我夢中で、必死に腕を振り払おうとした。

「ちょ、美香!暴れんなっ…美香!」

「離してよ!離して!離せ!」

「無理、離さない」

「嫌!こっちが無理!敦志と話したくない!」

「…じゃあ何で来た!」

「…っ…」

「話したくないのに何で来たんだよ!なんかあったんだろ!言えよ、てか、落ち着け」

ああ、もう。

涙が止まんない。

喚いてる間、必死で我慢してたのに。

「うっ……嫌…!」

「…泣いてんの?泣く程嫌な事あったのかよ」

「っ…く」

「美香、話せ」

敦志が男に見える。

少し怖い。

でもきっと、優しくて辛そうな顔してる…。

「あっちゃんのくせに!」